2013.02.09
不動産の名義変更,詐害行為 [自己破産][不動産]
1 詐害行為取消権とは,債務者が,債権者を害することを認識して自己の財産を
減少させた場合に,債権者がその行為を取り消して責任財産を保全する制度
です。
2 不動産の差押をすれば競売による配当を受けられる無担保の不動産を所有者
である保証人の夫が妻名義に,贈与で所有権移転登記をするのがよく問題とな
る例です。
3 夫の債権者(つまり夫をA社の貸金の保証人にとった甲社)は,夫に対して保証
債務の支払を命じる判決を得ても夫の名義から妻の名義になった不動産につ
いて、前記の判決では,不動産の差押はできません。
4 そこで,妻から夫名義に不動産の名義を戻すことができる権利が詐害行為取
消権です。
5 このような場合,金融機関甲社は妻に対して詐害行為を理由に仮処分をして,
それから妻・夫に裁判をすることが多いです。
6 私の夫・妻側の関与例は,例えば以下のとおりです。
① 夫・妻は仮処分を受けた時点でびっくりして相談にくることもありますし,
② 妻の名義変更について事情を聞きたいとの甲社の代理人弁護士からの
手紙の連絡で相談にくることもあります。
③ 仮処分をうけて,保証人としての履行を断念し,破産申立の代理人として
関与したり,
④ 仮処分,詐害行為判決をうけて結局破産した場合の夫の破産管財人として
関与したこともあります。
7 大阪時代は,信用金庫の顧問先が3つある法律事務所に在籍していました
ので,不動産の仮差押は内容証明作成程度のルーティンワークでした。
ほぼ毎週で、多い時は1日3件ということもざらにありました。
管理部の方が不動産の仮差押をするために不動産謄本をとって保証人から
親族への名義変更があることが判明すると詐害行為を理由に直ちに仮処分,
本訴をしていました。
8 詐害行為は債務者(保証人)が,破産になると否認権という扱いになります
が,私は破産管財人として否認権の行使も多数の経験があります。
9 そこで, 否認権の行使請求をうけたり,詐害行為取消の請求をうけたりの
解決には請求者側,請求をうける側双方の立場で多くの関与をしています。
10 とりわけ名義変更が自宅について行われていると,自宅を確保したい
という話が切実なものになりますので,債務者側の代理人の場合,
費用的効果を考えて解決策を検討することになります。
11 上記の解決策の策定には債権者代理人,破産管財人,申立代理人,
債務者側代理人,等の経験を踏まえて結論をだすことになります。