お知らせ

2022.02.15

弁護修習感想文(第75期司法修習生)

1 はじめに

私は,令和3年12月14日から令和4年2月9日まで,北薗先生とは別の法律事務所の指導担当の先生の下で,弁護修習をしていた第75期司法修習生です。北薗先生とは,指導担当の先生の紹介で,お知り合いにならせていただきました。北薗先生は,担当の司法修習生でないにもかかわらず,後進の育成のために,出張業務の同席を許して下さり,また,やり甲斐のある法文書の起案課題を与えて下さりました。

以下では,出張業務の同席及び起案課題を通じて得た感想等を記します。

2 出張業務の同席

2件の出張業務に同席させていただきました。

⑴ 1件目が,相続財産管理人業務の一環として,相続財産である不動産の換価をするための売買手続でした。

北薗先生から上記手続の同席の話をいただいた際,恥ずかしながら,不動産売買の手続を見たことはなく,相続財産管理人が選任されている場合に至っては,手続に関与し参加される者が誰なのかも検討がつかない状態でした。指導担当の先生のアドバイスもあり,前もって,司法試験勉強では流して読んでいた相続財産管理人の条文や相続財産管理人に関する書籍を読み,相続財産管理人の役割はもちろん,相続財産の換価手続に関与するであろう者を把握しました。そのお陰で,手続を具体的に理解しながら同席することが出来たと思います。

上記手続への参加を通じて,①不動産売買という世間で頻繁に行われる法律手続の流れを理解するとともに,②相続財産管理人が選任された場合の相続財産である不動産の換価という自らが法曹家となっても携わる機会がほとんどないであろう特殊な手続の流れを理解するという貴重な経験をさせていただいていると感謝しました。それと同時に,不動産売買という世間一般の法律手続でさえも知らない自らの見識のなさを実感し,実務に出る際の準備が大きく不足していると感じました。

自らの見識のなさ及び弁護士業務とは何たるかを実感したこととして,上記手続の同席において一番印象に残っていることがあります。それは,サービサーとは何か,ヒントは弁護士法,という北薗先生からの口頭での質問に対し,弁護士法第72条が思い浮かんだため,特に調べもせずに,法律事務以外のサービスを行う者で準委任を受けた者と答えたところ,適当なことを調べずに言うな,弁護士はその発言に責任があるのだ,と北薗先生からお叱りを受けたことです。この経験から,未知の問題に対し,まずは調べることの重要性と弁護士としての責任を学びました。弁護士業務とは日々の勉強の積み重ねであり,そのために多くの弁護士事務所は多数の書籍を所有しているのだ,ということも理解しました。

⑵ 2件目が,破産管財人業務の一環として,債権者集会での報告手続でした。

司法試験での選択科目が倒産法であったこともあり,債権者集会で行われることはある程度分かっていると高を括って望んだことが間違いでした。債権者集会は1件あたり10分程度で終わるのですが,報告した内容について,何故報告が必要なのか分からないことが多々ありました。具体的には,破産財団である不動産の管理会社を変更する等です。この経験を通じて,何事も知っている気になってはならないと反省し,自分は無知なのだと理解することの必要性を感じました。

上記手続に同席させていただいて一番印象に残っていることは,破産管財人である北薗先生の報告に対し,破産管財人として選任した裁判所はもちろん,破産者代理人弁護士も質問をしないということです。報告が明朗であることが一番の要因だとは思うのですが,それ以上に,北薗先生に任せておけば大丈夫である,と参加者全員が全幅の信頼を置いているのだと感じました。自らが法曹家になり,周りから同様の信頼を置かれるためには,北薗先生のように,手続参加者全員の立場に立ち,公正妥当で正確な業務の実績を何十件も積み重ねる必要があるのだと実感しました。

3 起案課題

私に他事務所の指導担当の先生が付いているためか,出される起案課題に対し十分な結果を出せないためか,与えられた起案課題は全部で8つと,北薗先生の下で指導を受けられていた過去の司法修習生に比べ少量でした。それでも全ての課題がやり甲斐のあるもののため,毎回嬉しい悲鳴を上げながら取り組ませていただきました。

特に印象に残っているものとしては,境界確定の訴えで争う当事者間の賃料相当損害金請求について,考えられる抗弁再抗弁は何か,という課題です。他の弁護士にも同じ質問を出したところ,5分で結論を出したため,司法修習生である私には60分という制限時間が設けられました。関連判例及び書籍の閲読並びに指導担当の先生のアドバイスもあり,一応の結論を出すことは出来たのですが,北薗先生の考えるその他の法律構成を十分に考え出すことが出来ませんでした。

このように,出される課題に対し,北薗先生の考える十分な結論を考え出せないことが多々ありました。その理由の一つとして,実務経験のなさが挙げられますが,それを加味しても複数回あったため,根本的に体系的な法的思考能力が欠けているのだと反省しました。残りの司法修習の期間では,出会う法曹家の方々の問題意識等に着目し,彼らの法的思考を肌で感じ,自らの糧にしたく思います。

4 最後に

上記のように,北薗先生のお陰で様々な経験をさせていただき,弁護士業務とは何たるか等,自らの知見が大きく広がりました。学びを得たことは多々あるのですが,特に,長年弁護士業務をされていても,法律手続における根拠条文を重視し時には条文を引くことを怠らない姿を見て,法曹家は法律・条文が命であるという基本を再認識させていただきました。将来自らが法曹家になっても,根拠条文を重視することを忘れず,業務に取り組みたく思います。

指導担当ではないにもかかわらず,未熟な私に対し,愛のある鞭を振って面倒を見て下さり,大変お世話になりました。北薗先生から得た経験及び弁護士としての姿勢を,今後に活かしていきます。本当にありがとうございました。

以上

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