2021.10.25
弁護修習感想文(2021年8月18日)
6月25日から8月18日までの約2か月間,北薗法律事務所で弁護修習をしていた74期司法修習生です。弁護修習中には,指導担当の先生だけでなく,北薗先生が担当されている案件の起案のご指導をいただいたり,打合せに同席させていただいたりしました。裁判所提出書面だけでなく,打合せの聴取メモやリサーチも含めると起案の数は45通でした。
弁護修習の初日には,北薗先生が後見人をされている方が相続人となった際の,相続財産管理人として必要な手続の書面を起案しました。今までの試験勉強においては,親族や家族法の分野は他の分野について触れる機会が少なかったため,書面の書式はもちろん,周辺条文についても読みなおしました。起案していた当時は,試験勉強をしていたときと比べて知識量が少なくなっていることを痛感し,起案した書面を提出した後には,北薗先生から10分ぐらいで書けるはずの書面であるとのお言葉をいただき,自分に対して残念な気持ちを強く感じました。加えて,同時期に,指導担当の先生に対して別の書面を起案し提出した際にも,相談者の方に手続に必要な費用や書類をしっかり説明できるようにとの講評していただきました。弁護修習を終えた今振り返ってみると,当たり前ではあるのですが,資料なしではなにも起案できないという現実を目の当たりにしたことで,しっかりと調べて確かな情報を基に起案をする意識が芽生えたと思っています。
北薗先生からは,裁判所に提出する書面の起案だけでなく,同席させていただいた打合せの聴取メモや,担当されている案件に関する論点についての判例のリサーチや判例を基に当該事例についての検討結果をまとめたレポートの課題もいただきました。
聴取メモは,相談者の家族構成やその属性,相談者が相談した事項と,打合せの中で浮上した新たな問題を簡潔にまとめるよう心掛けました。メモを作成する過程で,法律論を相談者の方にどのように伝えていたか,相談者のお話をどのように法的構成に引き直していたか,どのように相談者の事情について聴取していたかを想起し,大変勉強になりました。また,メモの作成には要点の抽出が大変重要だったので,この点は他の書面の起案の際にも意識するようになりました。
リサーチの視点に関し、北薗先生から,そもそも,相手方が想定している争点の内容とこちらが想定している争点が一致しているかの検討が必要であると教わりました。この点は盲点であり,依頼者の立場になり,利益を追求する姿勢が弱いと反省しました。
弁護修習中はほぼ,指導担当の先生と行動を共にさせていただきました。訴状を始めとする書面の起案についてもたくさんご指導いただきましたが,指導担当の先生との関係では,弁護士としての姿勢について学んだことを言及します。打合せにおいて聴取すべき事項や依頼者の方とのコミュニケーションの取り方について,法律論から素朴な疑問までの多くの質問をさせていただきました。依頼者との信頼関係を構築するためには,臨機応変な対応をし,依頼者の意向に沿う方針を立て活動できるかが肝になることは,弁護修習前から今までの経験や他の先生や先輩方のお話から感じていました。弁護修習を経た今,それは,依頼者と接したり弁護士として仕事をしたりしていくにあたり,自分の軸をしっかり持てるか否かに大きく左右されると考えています。ここでいう軸とは,相手や周囲を考慮せずに自分を突き通すという意味ではありません。自分が依頼者との関係でどの深さまで背負うか,受任前にどの程度情報を得られているか,受任することが真に依頼者の利益になるか等の判断について一定の基準を持つことで,臨機応変な対応かつ一貫した矛盾のない対応ができると弁護修習で体感しました。また,起案に対する指導担当の先生からの講評を受けて,私は起案した書面上では毅然としすぎたり,先手を打つ姿勢が強すぎたりすると感じました。指導担当の先生が起案した書面や同席させていただいた期日・打合せを振り返ると,弁護士としてこのような姿勢が必要になってくるときもあれば,このような姿勢が悪影響を及ぼし,事を荒立てるリスクもあることに気付きました。この点も,先ほどの臨機応変な対応が必要になってくる場合の一つではないかと考えています。
弁護修習では,起案の技術的な部分だけでなく,案件への向き合い方や相談者との接し方について深く考えさせられました。修習期間自体も折り返しになりましたが,この弁護修習で得られた発見を忘れずに,残りの修習中ではお会いする法曹の方々がどのような問題意識や方針の下活動されているかに着目したいと思います。
最後に,このように多くのことを学ぶことができ,充実した修習となったのも北薗先生,指導担当の池田先生,山本先生,事務員の方々のおかげです。大変お世話になりました。
ありがとうございました