2014.02.07
遺言作成者の増加[相続]
1.法曹関係者のブログで引用されていた、1月28日の静岡新聞に、静岡
県内での遺言作成者が、ここ数年で急増しているという記事が掲載されて
いました。
急増の背景には、「終活ブーム」や、東日本大震災後に「自分もいつど
うなるかわからない」という心理が働いたことがあるのではないか、と書か
れていました。
2.また、同記事には、
『公正証書遺言は資産評価額に応じて手数料がかかるものの、法的拘束
力が強いため活用が多い』とも書かれていました。
「法的拘束力が強いため」という表現は、誤解を招くおそれがあると思い
ます。
3(1)遺言の方式には、
①自筆証書遺言
②公正証書遺言
③秘密証書遺言
の3種類があります。
(2)いずれも、有効であれば、その「法的拘束力の強さ」は同じです。
(3)遺言書は、法律で有効であるための要件が定められています。
ア ①自筆証書遺言の場合、全文・日付・氏名を遺言者が自分で書くこ
とが要件です。
そのため、日付の記載がない、本人が書いた文字ではない等、無効
を主張されることが多いのです。
③秘密証書遺言も、法律で有効であるための作成方式が細かく定め
られていますので、無効となる場合が多くなります(③として無効な場合、
①として有効かが問題になります)。
イ また、有効な①自筆証書遺言と③秘密証書遺言でも、さらに家庭裁
判所の「検認」というチェックを受けなければいけません。
ウ これに対して、②公正証書遺言は、公証人(法務大臣から任命された
公務員)が、法定の有効要件を満たしていることを確認して作成されます。
また、公証人は、遺言者の「判断能力」もチェックしています。
そのため、無効だと争われることは、ほとんどありません。
なお、③公正証書遺言には、上記の「検認」は不要です。
エ さらに、③公正証書遺言では、遺言執行者(遺言の内容に基づき相続
手続きをする者)が必要な場合であれば遺言で指定しておくなど、遺言の
執行すなわち円滑な相続手続のことも考慮されます(遺言書で指定がな
い場合、家庭裁判所へ選任を申立てる必要性も出てきます)。
(4)したがって、公正証書遺言は、法的拘束力が他より強いのではなく、無
効だと争われる可能性(もしくは無効である可能性)が他より低く、かつ遺
言執行が適確・迅速になされる可能性が高いということなのです。
4 遺言書の作成には、信託銀行は関与する例がある他、士業では弁護士以
外に行政書士や司法書士、税理士が関与しています。
円滑な相続手続のために作成する遺言ですが、せっかく作成しても、①遺
留分減殺請求、②遺言無効、③遺言の効力の範囲の争い、等問題が生じる
ことも決して少なくありません。
弁護士は、他士業と異なり、相続で生じ得るこれらのさまざまな問題への
対応を、交渉や訴訟の代理人として多く経験しています。
そのため、問題を避ける遺言書、あるいは問題となり得ることを踏まえて対
策を講じた遺言書を作成するには、弁護士のアドバイスを受けることが最も
適切です。
5 遺言書に関して、当事務所の「相続ガイド」のページにより詳しく記載して
おります。ご参考に、是非ご覧ください。