その他

2014.01.16

賃貸借の当事者の変更 その10(敷金)[不動産]

1 貸主(甲)と借主(乙)の賃貸借契約とします。

2 甲について、民事再生手続等が開始された場合の敷金の
 取扱いは、民事再生・会社更生等の再生型と破産・会社清算
 等の清算型とで異なります。

3 この点に着目して、新司法試験の倒産法(施行前の試行?)
 の問題で、敷金の取扱いを通じて倒産法全体の理解を問う
 問題が出題されていました。

4 破産の場合
(1)敷金返還請求権は、目的物件の退去(明渡し)を停止条件
 とする破産債権であり(破103Ⅳ)、最後配当の除斥期間満了
 までに明渡さない限り、配当を受けることはできません(破198Ⅱ)。
(2)賃借人は賃料支払の際、破産管財人に対し、敷金返還請求権
 の額の限度で弁済額の寄託を請求できます(寄託請求 破70後段)。
  寄託請求をし、かつ(1)のとおり最後配当の除斥期間までに
 賃貸借契約を終了し、明渡しをした場合、敷金返還請求権と
 賃料請求権の相殺の意思表示をして、寄託金の返還を受ける
 ことによって、破産管財人より、敷金全額の返還を受けることが
 できます。
(3)任意売却では新所有者に敷金返還債務が引き継がれる場合
 がありますが、競売の場合には、敷金返還債務は落札者に引き
 継がれない(つまり、新所有者からは返還してもらえない)場合が
 多いです。

5 担保不動産収益執行の場合
  管理人には、賃料債権を行使する権限(収益受領権限)が
 帰属しますが、管理人は敷金を返還する義務はありません。

6 競売の場合
 4(3)のとおりです。

7 相続の場合
(1)賃貸目的物件(甲所有)につき、甲の相続人A,Bの遺産
 分割の結果、Aが同物件の単独所有者となった場合、Aに
 敷金返還義務があります。
   しかし、賃料債権が可分債権であることとの均衡で、Bも
 敷金返還義務を負うという考え方もあります。
(2)(1)において、Bが、敷金を甲の代理人として保管していた
 場合、遺産分割でAが当該不動産を取得できる前に、AがB
 に敷金の50%の引渡しをすることが、そもそも可能か、という
 問題があります。

8 4(1)~(3)、5、6、7(1)(2)のいずれの事案も、当事者の
 代理人もしくは破産管財人等として、関与したことがあります。

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