相続・遺言

2016.02.06

相続あれこれ

1 ここ最近、相続放棄が家庭裁判所により受理された相続人より、
 ①葬儀費用を遺産より支出したこと
 ②被相続人が契約者であった公共料金契約の解除をすること
 ③被相続人が賃借人であった賃借物件の契約解除及び明渡の方法
等、法定単純承認とみなされる行為(相続放棄の効果を妨げる可能性がある行為)の線引きに関する相談を多く受けます。
2 また、多重債務を抱えたまま、債務総額の1%以下の金額で長年分割返済を継続してきた方が、貸金返還請求の訴えを提起されたとして相談に来られることが増えています。
(1)ご高齢の相談者の場合、ご本人が破産手続開始申立をするか、従前どおりの返済を継続していくか(つまり、ご本人の相続開始後に、相続人に相続放棄をしてもらうか)といった話になります。
(2)多くの方が、相続放棄してもらうこととする(破産手続開始申立はしない)というご意向を示されます。この場合、ご本人がご高齢であることから、その相続開始時には、親のみならず兄弟姉妹にも既に相続が発生していることが多いのですが、ご本人の子が相続放棄をしても、代襲相続によって、兄弟姉妹(故人)の子(甥や姪)においても、相続放棄手続が必要になることを説明しています。すると、生前に債務整理をしておこうとご決断される場合も多いです。
3 その他、相続放棄はしたいが、被相続人名義の自宅は確保したい、との相談も少なくありません。その場合、自宅の購入予算を聞いています。
  相続放棄をしても、生命保険は受領できるため(生命保険の受領の可否も、相続放棄に関してよく相談を受ける事項のひとつです。)、生命保険金で自宅の取得資金を確保できることもあります。
 相続財産管理人の選任申立をしてもらい、相続財産管理人より、時価(抵当権被担保債務の残額ではない)で購入するという具体的な手続の流れについても説明しています。
4(1)会社の事業資金等借入の個人保証をしていた会社経営者が死亡した場合、同じく当該借入の連帯保証債務を負っている親族(推定相続人)から、ご本人の破産手続開始申立をしたいとの相談を受けることも少なくありません。
  この場合、ご本人の破産の他、亡くなった会社代表者の連帯保証債務についての相続放棄も合わせて検討が必要です。これは、解決方法として、連帯保証債務を相続して破産するか、相続放棄とするか、という問題です。
(2)既にご本人が破産手続開始申立をして、破産管財人が選任されている場合、その後の相続放棄の効果には、限定承認がなされた場合と同様の扱いとする(破産財団の限りにおいて債務を負う)という制限がかかります。通常の相続放棄の効果を生じさせるには、破産管財人が家庭裁判所の許可を得て「承認」をすることが必要です。
(3)これに対して、未だご本人の破産手続開始申立がなされていない場合、ご本人の連帯保証債務と会社代表者(故人)の連帯保証債務が併存した状態で破産手続開始申立及び免責手続をするか、相続放棄の完了後に破産手続開始申立をするか、の選択をすることになります。
  併存のままでの手続の場合、財団は、相続財産と相続人固有の財産に「財産分離」がなされ、破産管財人により、各別に清算され、別個に配当手続がなされることになります。
5 相続の放棄に関しては、家庭裁判所への申述期間(熟慮期間)が経過しているかどうか、といった問題も、よくなされる相談の一つです。

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