2019.01.09
最近の相続
1 遺言執行者
(1)遺言執行者とは、相続開始後に遺言の内容(不動産の相続登記手続や預貯金の払戻等)を実現する権限を有する者です。遺言作成者が遺言時に遺言執行者(ないし遺言執行者を指定する人)を指定するほか、家庭裁判所が選任することで、遺言の内容を実現する権限を有します。
(2)現在、遺言時に依頼者が遺言執行者に指定されていた案件(①)で相続が開始しているほか、別の案件(②)において家庭裁判所から遺言執行者に選任されています。
(3)①の案件では、相続人でもある依頼者が遺言執行者の指定を受けており、当職は遺言執行者の補助者として関与しています。
この「補助者としての関与」という点については、現行の民法では、遺言執行者はやむを得ない事由がなければ第三者にその任務を行わせることができない、とされていることが関係しています。
もっとも、今回の相続法改正において、遺言執行者が第三者にその任務を行わせることができる(「復任権」)ことになりました。
この改正は、遺言において必ずしも十分な法律の知識を有しない相続人等が遺言執行者に指定されることが多いことや、遺言執行者の職務の範囲が広範で、難しい法律問題を含む場合も少なくないことから、適切に遺言の内容を実現するという遺言執行者の任務遂行が単独では困難な場合があり得ること(法律知識を有する第三者への復任が必要であること)を立法趣旨としています。
(4)②の案件は、遺言の内容が、「相続させる遺言」(改正法における「特定財産承継遺言」。特定の財産を特定の相続人に承継させるという内容。)か、遺贈(相続人以外の者への承継させるとの内容)か、の判断を要しました。この判断は、不動産登記手続において、権利証(登記済証ないし登記識別情報)が必要か否かに関わります。
2 相続財産管理人
(1)相続財産管理人とは、相続人がいない場合(相続人全員が放棄した場合も含む)に、相続財産の適切な管理のために家庭裁判所によって選任される者です。
(2)相続財産管理人が選任される案件として、大きく次の3つが挙げられます。
①多重債務型(被相続人が多重債務を負い、相続人全員が相続放棄をした場合)
②特別縁故型(法定相続人ではないが被相続人と内縁関係にあった者や被相続人を献身的に介護していた者などへの遺産分与手続を要する場合)
③国庫帰属型(遺産を最終的に国に帰属させる手続を要する場合)
(3)昨年は、①②③の全ての場合での相続財産管理人案件を受任しました。
③国庫帰属型の案件では、財務事務所との打合せを要しました。
①多重債務型の案件では、債権者らへの配当弁済を行うにあたり、破産法のいわゆる「別除権」的債権者(遺産に属する特定の財産から、他の債権者に優先して弁済を受けることができる債権者)の債権額をどう扱うべきかについて検討を要しました。
(4)また別の案件では、相続財産を、相続財産の破産管財人に引き渡すことで、相続財産管理人の任務を終了したというものもありました。多重債務型ですが、配当するにあたり、債権の認否に困難を来したため(認否の手続が整っている破産手続で認否を行うことが適切と判断したため)です。
3 遺産分割
(1)遺産分割の案件では、「特別受益」や「寄与分」など、相続人間の公平が問題となることが多く、当職が近時受任した相続案件でもこれらは問題になっています。
(2)それに加えて、①被相続人の財産からの支出の「使途不明金」や、②被相続人作成の遺言に対する遺言無効(調停、訴え)が問題となる案件も受任しています。
(3)また、遺産分割調停の案件では、相手方が不出頭のため、調停に代わる審判も検討しました。
(4)その他、法定相続分での遺産の換金・分配をしたいという遺産整理の相談や、遺留分放棄許可申立(被相続人の生存中に、あらかじめ「遺留分(一定の相続人に留保された財産)」を放棄するため、家庭裁判所の許可を得る申立)の案件もありました。