弁護士北薗のBlog

2018.12.20

仕掛

1 建設会社が住宅建築請負工事の途中で倒産・破産するという事案において、弁護士は、①破産手続開始申立代理人(破産者・清算人側の代理人)、②破産管財人、③請負工事の注文者(施主)の代理人としての立場で、事案に関与します。

2 注文者の代理人としては、

(1)建築請負工事の出来高の査定

(2)建築現場に放置された出来高(既施工)部分や建築資材の所有権帰属者の確認

(3)建築請負工事用に発注済みの資材(建設会社の下請先に所在する仕掛資材)の所有権帰属者の確認

(4)設計図面や地盤調査報告書、建築確認書等の確保

(5)下請先の情報の収集や、建設会社と下請先との引継ぎ事項の確認

等を①破産者・清算人側の代理人に求めます。

3 (1)破産者・清算人側の代理人は、設計図等の引渡しや、下請先の情報提出には比較的応じてくれますが、その他の求めに対しては、「破産管財人の判断による」との回答がなされることがほとんどです。

(2)破産者・清算人側の代理人から「破産管財人の判断による」との回答がされてしまうと、建築工事の残部の請負を依頼された業者によっては、出来高(既施工)部分の所有権の帰属が不明である(必ずしも注文者とはいえない)ことを理由にして受注を断ることもあるようです。

(3)注文者の代理人としては、残工事の請負業者に対し、考え得る様々なリスクを説明しつつ、破産手続開始決定後の破産管財人との交渉(出来高の確定、所有権の帰属、工事代金過払額の確定)に備えて、証拠の保全をはかることになります。

4 (1)破産手続開始決定後は、注文者の代理人は、

① 過払金(出来高を超える既払工事代金)がある場合には、破産法54条2項の財団債権者としての権利行使を目指します。

② また、出来高より既払金額が少ない時には、適切な出来高の認定をして、損害が少なくなるように努めることになります。

(2)破産会社に対する債権は、①財団債権、②優先的破産債権、③一般破産債権 の順で、破産財団から支払を受ける優先順位が定まっています。

(3)破産会社(建築会社)に対する主な債権は、ア)過払金返還請求権と、イ)損害賠償請求権ですが、ア)過払金返還請求権を財団債権とするためには、破産法所定の手続きをとる必要があります。

5 (1)注文者本人が建築会社に連絡をしても、建設会社の代理人弁護士が介在している場合、必ずしも建築の専門知識を有するものではない弁護士が間に入るため、注文者本人の意図が建設会社に伝わらず、残工事が進まないことがあります。

(2)破産手続開始決定後は、代理人弁護士の立場を破産管財人が担うことになりますが、やはり、破産管財人を介して注文者本人の意図が伝わらないという同じ状況が生じています。

(3)申立代理人弁護士は破産申立手続、破産管財人は他の破産財団の換価や、リース物件の引渡対応、その他の債権者への対応等の職務があることから、請負工事途中(仕掛)の注文者への対応を他の職務に優先させるかは、各弁護士の個性(弁護士事務所の個性)や、事件の特性が反映されるように思います。

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