弁護士北薗のBlog

2017.12.25

「家庭裁判所における遺産分割・遺留分の実務(第3版」)」

1 相続事案に際し、私が最も多く参照する文献である「家庭裁判所における遺産分割・遺留分の実務(日本加除出版株式会社)」の第3版が、平成29年10月に出版されています。

2 預貯金債権の遺産分割対象性等に関する記載が増加されています。

3 気になった箇所を拾い読みしました。

(1)ア 電話会議システムを利用する場合、当事者に手続代理人として弁護士が付かない場合(本人が相手方当事者である場合)に、電話の相手方の本人確認をどうするかという留意点があります。

イ 本書によると、「調停裁判所から相手方所在地近くの裁判所へ手続共助という形で調停室の借用と本人確認を依頼し、相手方にその裁判所へ出頭してもらう運用により、利便性と公正な手続のバランスを保つ工夫がなされている。」(36頁)とのことでした。

(2)ア 最近、破産管財事件の処理の中で相続が問題となった事案で、第三者に相続分譲渡(相続人が複数いる場合、相続財産全体に対する各相続人の持分を他者に譲渡する)をして、被相続人の遺産分割を行うかどうかを検討することがありました。

イ 遺産分割後の不動産の登記手続が不明でしたので、いつも相談をしている司法書士の先生にお聞きして回答を頂いたのですが、その回答と同じ内容が本書にも記載されていました。

ウ すなわち、「被相続人名義の不動産について、共同相続人以外の第三者が共同相続人のうちの一人から相続分の譲渡を受けた場合に、譲渡を受けた者の名義にするには、①相続を原因とする共同相続人への所有権の移転の登記を経た上で、②相続分の譲渡による持分の移転登記を順次申請するのが相当である。(登記研究728号243頁)」(120頁)とのことでした。

(3)ア 預貯金債権が遺産分割の対象となることに関連して、遺産分割の対象とならない財産である、遺産である賃貸不動産から生ずる賃料が被相続人名義の預貯金口座に入金された場合の取扱いが気になっていました。

イ 収益物件の管理件数が多いので、頭を整理しておく必要がありました。

ウ 本書によると、「賃料が相続開始後に被相続人名義の預貯金口座に入金がされた場合においても、利息と同じように、相続開始時の残高相当額部分のほか相続開始後に入金された賃料を含む預貯金債権全体が遺産分割の対象となると考えられる。」「相続開始後に被相続人名義の預貯金口座を残すという相続人全員の合意は、その後に入金される賃料も遺産分割の対象に含める旨の合意を含むと解されるからである。」「しかし、共同相続人の一人につき超過特別受益が認められ、具体的相続分がない場合においては、同人は相続開始後に入金された賃料を取得できなくなるという問題が生ずるので、このような場合には上記合意が成立することはないと考えられる。」「実務においては、賃料が入金される一方で経費やローンが引き落とされ、その経費に当該不動産以外のものが含まれている場合がある。この場合は、経費との差し引き計算をする煩雑さを考慮して、入金額を遺産分割の対象とはせずに、別扱いとし、収入と支出につき別途に計算して分配している。」とのことでした。

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