2017.06.16
作成された遺言書についてのあれこれ
1 相続人が遺言者を取り込み、何度も遺言書を作成させたことで、次々と作成された遺言書のうちどれが有効か(あるいはどの部分が取り消されたか)が問題となることはよくあります。
私も、破産管財事件で破産管財人として、先行遺言による受贈者が原告となった後行遺言の遺言無効確認事件を取り扱ったことがあります。
2(1)遺言は厳格な要式行為ですので、民法に定める要件が整っていないと、遺言書としては無効です。生前に弁護士等専門家による要件の確認を受けていれば、要式性の不備は修正することができます。
(2)もっとも、要式性に不備のあるまま相続が発生(遺言者が死亡)してしまった場合(遺言書としては無効の場合)でも、弁護士は、当該書面に記された遺言者の意思を実現する方法はないか、という視点で事実関係を確認します。具体的には、書面作成に至る事実経過や書面作成時の状況等を聴取し、死因贈与といえないかを検討します。
3(1)一方、有効な遺言書がある相続の相談の場合、生前に相談を受けて入ればトラブルを避けることができたということも少なくありません。
(2)せっかく遺言を作成したのに対立する相続人の協力を得なければ遺言の内容を実現できないという問題の場合、事前に相談を受けていれば、遺言において遺言執行者(遺言の内容を実現する者)を指定する助言ができたのに、と思うことがあります。
(3)また、自筆証書遺言の場合、相続開始後遅滞なく家庭裁判所に遺言書を提出し、「検認」(相続人に遺言の存在・内容を知らせ、遺言書の形状・状態・日付・署名等を確認する手続)の請求をしなければならないことも、事前に相談があれば助言が可能です。
(4)さらに、「遺留分」(一定の相続人に保証された最低限の相続分)によるトラブルを視野に入れない遺言の場合、事前に相談を受けていれば、トラブルの解決を視野に入れた補充事項の加筆や、遺言内容の変更を助言できることもあります。
4 インターネット上では、作成された遺言書について、相続発生前に点検をするサービスの提供を明示している法律事務所も増えているようです。