弁護士北薗のBlog

2017.01.31

再転相続

1 夫婦に子がおらず、自宅不動産の登記名義人が夫婦共有もしくは一方の配偶者のみと なっている場合の相続において、遺言書が無い場合、自宅不動産を他方配偶者の単独所有とするためには、他方配偶者とともに相続人となる親もしくは兄弟姉妹との協議(所有権移転登記手続上必要な書類への署名・押印)が必要です。

2 遺言書が無く、相続人が他方配偶者と兄弟姉妹であった場合に、相続開始後何年も遺産分割協議をせず放置してしまうと、「再転相続」(相続人自身の相続開始)が問題となり得ます。いざ署名・押印の取り付けが必要になった場合に兄弟姉妹が亡くなっていると、兄弟姉妹の相続人(子ら)の署名・押印が必要になってしまうのです。

3 この「再転相続」が問題となった最近の案件では、夫の相続開始時における妻以外の相続人は3人(夫の姉甲と姉乙の代襲相続人である子AB)のみであったのに、遺産分割をしないまま放置したことで、合計12名もの署名・押印が必要となっていました。放置している間に、①姉甲の相続が開始し、②姉甲の相続人にも相続が開始し、③姉乙の代襲相続人Aにも相続が開始したことで、Bのほかに11人もの署名・押印が必要になったのです。

4 配偶者の兄弟姉妹の子(さらにその子)となれば連絡先を知らないことも多く、連絡先を知っていても疎遠であったり、他府県(外国ということもあります。)に住んでいたり、ということも珍しくありません。

5 なお、相続人が配偶者と兄弟姉妹である場合、兄弟姉妹には「遺留分」(遺産の一定割合の取得を保証する制度)がないため、遺言書によって、全てを他方配偶者に取得させることも可能です。

6 遺言書の作成や、適時の遺産分割協議は、相続で「もめる」心配がない場合であっても、『煩雑な事務手続きを避ける』ために、とても大切です。

entryの検索