2011.10.26
若年層の逸失利益
1 逸失利益は、損害の発生期間が将来かつ長期にわたります。
2 そうしますと、若年者であるがゆえに、事故時点での収入水準が
低く抑えられているケースが多いため、事故時点の一瞬の収入水
準をそのまま固定して、稼動期間全期間における収入額とするこ
とは、必ずしも合理的とはいえないことになります。
3 この点、裁判所は、いわゆる「三庁共同提言」として、比較的若年
の被害者で生涯を通じて全年齢平均賃金または学歴別平均賃金
程度の収入を得られる蓋然性が認められる場合には、基礎収入
は全年齢平均賃金または学歴別賃金により、上記以外の場合に
は基礎収入は事故前の実収入額による、という提言をしています。
4 先日読んだ文献によると、被害者が事故時30歳未満の裁判例で
は、全体(120件弱)の8割強について、基礎収入に全年齢平均
賃金を採用しており、これに対し、被害者が事故時30歳以上35歳
以下の裁判例は、全体(約40件弱)の2割程度しか全年齢平均賃
金を採用していなかった、というデータが出ていました。
5 「蓋然性」の問題でもあり、立証の方法による部分が大きく、現在・
過去の職業、収入等を立証することが必要となってくるため、専門
家に相談する方が良いと考えます。